「ーッ!スネーク様が来てやったぜェ!」
「ぎゃーっ!!」
これこれ。コレを聞かないと実家に来た気がしない。
「お。相変わらず色気のねぇ奇声だな」
久々の帰郷、長旅の疲れもをイジれば吹っ飛ぶってなモンだ。
「とッ突然後ろからっ、がばぁ!ってされたら誰だってこうなるよ!」
「わかったわかった。俺に会えて嬉し過ぎる、と」
「違う!ぜんぜん違う!」
全否定=全肯定。“イヤスキ”ってやつだ。愛い奴め。
「俺もちょー嬉しいぜェ?もうさっきから猛って仕方ねェし」
獣(けだもの)?…いや違ェな。俺は蛇だし。
「あーわかったから、スネークにもコレあげるからとにかく離れて!」
…今、“にも”って言ったな、コイツ。どういうことだ。
「今日バレンタインデーだから、義理チョコどうぞ」
いちおうお世話になってるからあげる、と小さな包みを俺に出した。
「ニホンではこっちと違って、女性が男性にチョコレートを渡すんだって。それに倣ってみました。ハイ」
それよりも…俺はそれが入っていた袋の隣にあるもののほうが、気になっているのだが。
「そっちの大きいのは何だよ」
「これは渡す人が決まってるからダメ!!」
ちょっと手を伸ばそうとしたら、ずいぶんな剣幕だ。しかもチラリと見えたカードのメッセージが――。
「へぇ〜そう。そうなの」
どいつだ?俺のに仮初めの夢を見せている奴は。
「な、なにスネーク」
…まあいい。泳がせた後のほうが、より美味しく頂けるだろう。
「今日だけは許してやる。寛大だなー俺様ってば」
「は?」
「“義理チョコ”、有り難くいただくぜェ」
包みを持って、ひらひらと手を振った。
「…う、うん。じゃあわたし、行くね?」
あっさり開放した俺を訝(いぶか)りながらも、は急ぎ足で居なくなった。
「せいぜい、いい夢を…チャン」
もう二度とねェぞ…大切にしな。
次に会ったときには、それごと俺がまる飲みにしてやる。……必ず、イイ顔が拝めるに違いない。
...more?
A | B | Q | C | H | W | Bl | Ma | Sn | Sta | Dr.W |