「っ、ただいま!」
「あ、クラッシュ!おかえりなさいー」
おつかいから帰ってきたら、いちばんにに会えた。おれが荷物をたくさん持ってるから出かけたのがわかったみたいで、はご苦労さま!ってねぎらってくれた。
「そんなクラッシュにはチョコレートのプレゼントだよ!どーぞー」
そう言って彼女は、カワイイリボンのついた小さな包みをおれにくれた。
「わぁ!どうしたの、これ?!」
「今日はバレンタインデーでしょ?だからわたし、チョコレート作ったんだ」
ばれんたいん。街がなんだか赤とかピンクとかハートばっかりだったのは、コレのせいだったんだ。
「もしかして昨日作ってたのってコレ?!ありがとーっ」
今日は大切な人にプレゼントをする日なんだ、とは教えてくれた。
ありがとーってみんなにあげるのは“義理チョコ”で、大好きだよって一人だけ特別にあげるのは“本命チョコ”なんだって。
そういえば彼女の持つ袋の中に包みがいくつか見えた。まだ誰かに渡す気なんだな。
……あれ。ちょっと待って。
「…ねえ。おれは、どっち?」
「え?」
「本命ですか?義理ですか?」
「…えっと、…義理チョコ」
…そっか。ちょっと残念。
「じゃあさ。おれを今から、本命にできない?」
おれはいつでもが本命だし!って言ったんだけど、「いいよ」とは言ってくれなかった。
「どうして?」
聞いても、すぐには答えてくれなかった。
しかも、どんどんの顔がくもっていって……おれは、すごく悪いコトをしている気分になった。なんだかわからなくて、泣きそうになってきた。
そんなおれを見かねたように彼女は口を開いたけれど――聞きたい答えじゃなかった。
「もう…本命のひとが、いるんだ。ゴメンね、クラッシュ」
だからおれを本命にはできないって、はすまなそうに告げて、行ってしまった。
そうか…みんなと一緒じゃないイチバンが、にはいたんだ。
悲しかった。おれはのこと、大好きなのに。
おれを本命にしてくれたら、ぜったいぜったいをシアワセにするのに。
「ねえ…そのひとは、をシアワセにしてくれるの?」
ひとりでつぶやいても、もちろん答えは返ってこなかった。
...more?
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