この研究所――実家に帰るのは何週間ぶりのことか。居ても数日ですぐ持ち場に戻らなければならないので、ずいぶん前のことに感じてしまう。
今日はじっくり散策でもしようか、と思った矢先にを見つけた。
「、何してるんだ?」
彼女に会うのも久しぶりで、わたしは嬉しくなって声をかけた。
「あれーマグ兄さん、帰ってたの?」
振り向いたは両手に荷物を抱えていた。何だか、雰囲気がキラキラしている。
「つい、さっきな。そろそろ定期メンテだったから、早めに来た」
「そっか。お疲れ様だね〜」
「そうなんだ、ほんと。このごろ疲れてしまって」
よければマッサージしてくれないか?というわたしの言葉に、彼女はうーんとひとつ唸ってから申し訳なさそうに口を開いた。
「ごめんね、今日は探し人がいるから…ちょっと」
かわりと言っては何だけど…と、彼女は小さな包みを取り出してわたしにくれた。
「今日はバレンタインデーだから、チョコレートを作ったの」
バレンタインデー…。ああ、知っている。しかし女性がチョコレートを渡すのは…確かニホンの習慣だった。
とすると、この小ささは――。
「…これは、義理?」
「うん。マグ兄、いつもお世話になってます!」
清々しいほどの肯定っぷりだった。
「……いや、こちらこそどうも」
つられて、こちらまで社交辞令を返してしまう。
「そんじゃ…探し人が“本命”だ?」
「わ、よくわかったね!さすがマグ兄だなぁ」
…これは当たっても嬉しくない。
「わたしも、ダテに天井にくっ付いているわけじゃない」
「あはは、関係ないでしょそれ」
しかし…彼女も恋をしていたのか。…もう少しの間、恋に気づかないでいてほしかった、なんて思うのは勝手だろうか。
「まぁ、がんばってきなさい、」
「うん。ありがと!」
いい笑顔だ。そうさせる存在に、わたしがなりたかったのだが…。
「いつだって、わたしの隣に来られるようにしとくから。…好きなだけ遊んでおいで」
離れ行くに、この言葉が届かずとも構わなかった。
「……」
――さて、このハンデ…乗り越える手立てはあるだろうか?
自室で考えようと、わたしはそこへ向かった…はずだったが、なぜか博士の部屋に来てしまった。
…せっかくなので、メンテナンスを受けようと思う。
...more?
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