「だから、聞いているのか私の話を!」
「はいはい、聞いています聞いていますから、これ以上近づかないでください集中できない、あ!逃げられる待てー!」
「聞いていないだろう!お前はどうしてそうなんだ!!」
彼女が手に持っているのは小型の携帯ゲーム機。
折角のオフだと言うのに、朝っぱらから、だらだらだらだらと私をそっちのけで没頭している。
一度、ハマると睡眠時間を削ってまで遊び出すのが昔からの癖らしく、これは何度私が文句を言っても治る気配は無かった。
取り上げようにも携帯機。持ち運び可能な所為で、ふらふらぐるぐる追いかけ回すのが当たり前となってきている。
「少し、休憩を挟みなさい目を休ませなさい。というか、昼食くらい取ってくれないか?って!」
「ごちそーさま、サンドイッチおいしかったですー」
「いつの間に!!」
「メタルさんが小言を言ってる間に」
「〜〜〜!」
どうしてこんな、のらりくらりとした女を好きになってしまったのだろうか。
惚れた弱みとでも言う奴なのだろうか。
時折、酷く憎たらしくなる事は確かにある。が、それ以上に好いてやまないから、結果、傍に居続けてしまうのだろう。
「よし、お腹満たされたから、本気出してやってくる。しばらく一人にしてねー」
「それとこれとは別だ!少しは私と一緒に…」
「夜にね!」
「!?」
「やだ〜、ヘンな事考えないでね〜。それじゃ、メタルさんばっはは〜い」
「こら、待ちなさい!私をからかうんじゃないと何度言ったら…!」
後日、この一部始終を見聞きしていた兄弟機達に
『どこぞのカートゥーンの白黒アニメみたいだ』
と言われて絶句する私と、隣でけらけら笑う彼女の姿があった。
End.
「買い物行くぞ」
「ほわっ!?」
目の前に立つスネークは、見慣れない格好をしていた。すなわち、ワイシャツに黒のVネックカーディガン、黒のスラックスにこれまた黒の革靴。チェックの赤いネクタイが彩りを添えている。長い白髪は後頭部でポニーテールに結わかれていた。
「本格的に寒くなる前にコートマフラー手袋その他を買わなくちゃ、一歩も出られなくなるだろ」
そういえば、ここ最近急激に肌寒い。もとより露出を好まず、重ね着も多くする性質(たち)なのでなんとかなっているが、これ以上寒くなったらさすがにきついと感じ始めていた矢先だった。
「ああ、そういうことか」
「なんか買いたいものがあるならついでに買うが、とりあえず行くぞ」
外に出るためにカジュアルな格好をしたスネークは早々に外出口に向かう方向に歩を進める。突然の展開に少しばかり呆けてしまったが、慌てて追いかけた。早足で、追いついた。