が私の胸元に頭を預け、安心しきって眠たくなった頃……私の頭には一つの案が浮かんだ。
ふいに、サッと素早く彼女を掬(すく)って、私は居間の窓から外に出た。
「…ひぇっ?!」
安息を奪うのは忍びないが、突然のことに驚く表情はこの上なく可愛らしいと思う。
「その箱は、離さず抱えておいてほしい」
基本、人間のエネルギー源に興味はないが、これは特別だ。…後ほど、出来れば一緒に食したいものだ。
「…久しぶりに自室に行こうと思う。も如何か」
「あの、抱えられている時点で…わたしは選択権がない気がする」
恥ずかしいし、ドキドキして死にそうだし、早くどうにかしてほしい。
私の腕に顔をうずめて、消え入りそうな声では言った。
「御意。」
…一刻も早く、どうにかしてやる。
テラスの手すりを、一段、二段と飛び乗っていく。浮き足立つのか、地面から離れていく度に彼女はどんどん強くしがみ付いてきた。
「ど…して、外から行くのっ」
「早いからだ」
窓の施錠も片手で開けられる。…だがこの部屋は、彼女には少し埃くさいかもしれない。
仕方がないので、窓は開けっ放しにしておこう。
後は気にならないように、私が誠心誠意出精することとする。
「これは…」
部屋に入った私はようやく、博士の言葉の意味がわかってきていた。
…成程。彼が一枚噛んでいたわけか――。
「……食えない男だ」
「え?」
「何でもない。一先ず到着だ」
やけに綺麗なそこに、彼女を下ろす。
知らぬ間に、真新しい大きなベッドが部屋を手狭にしていた。
――「とにかくの好きにさせてやってほしい。
その条件さえ覆さなければ、お前の好きにして構わない。
ただし、翌朝以降は通常任務に戻ること。
以上が注意点じゃ。…頼んだぞ、シャドー。」