'09 X'mas dream #4-F

--ガラスペンルートはインテリヤクザ--

「へぇ、ガラスペンとインクだ…!お洒落…」

は物珍しいといった表情で俺の出したプレゼントの中身を見ていた。
「これは…」
「あぁ、俺だ」
俺は口角が上がるのを止められなかった。他の連中を出し抜いてこの後お楽しみが出来るってんだから、やめろってほうが無理だ。
「…なんて悪人面だ」
「フラッシュ、いじめる気でしょ!ダメっ絶対!」
「るっせ!離れろクラッシュ」
エアーとクラッシュのひどい言いようは適当にあしらって、をもう一度見やる。キラキラと光る硝子の芸術品を手に取り、じっくりと眺めていた。
「フラッシュってセンスいいんだね。ありがとう」
「落とすなよ。割れっからな」
「もう、大事にするよ!」
は少しむくれて、だが手先は慎重にガラスペンを箱に戻した。
「博士、他のも開けていい?」
「勿論構わん。全部お前のものじゃ」
「やった!」
ひとまず俺からのプレゼントをしまい、が他の包みに手を伸ばす。俺は奴らの会話の輪から少し離れて、もう一度ひとりで呑みなおすことにした。


。あとの片付けは皆でしておくから、フラッシュの部屋に行ってやりなさい」
「え、いいの?」
会話もひと段落したところで、博士がに声をかけた。
「ああ。そのまま泊まればよいじゃろう。準備して行きなさい」
「うん。ありがとうね、博士。みんなもプレゼントありがとう!」
は散らかしっぱなしのリビングを気にしていたが、やがてもろもろのプレゼントを持って部屋を出た。
「フラッシュ」
「あー、後でな。部屋で待ってるぜ」
「んー」
両手が塞がっているくせに、器用に手を振っては廊下へとご機嫌に去って行った。

「…んじゃ、俺も行くかな」
「あれぇフラッシュも片付けパス、なわけ?」
「や、あいつを待たせたらダメだろ。すぐ来るとは限らないけどな」
ヒートは暗に抜け駆けするなと言っている気がするが、切り返す。
博士からも今日は勝者特権じゃから、と許可が出た。お上がこう言うのだからいいのだ、とリビングから出ようとしたのに。
「ずりィなー、皿くらい洗ってけよ」
すれ違いざま、明らかに不満な顔で馬鹿がほざいて俺は軽く切れた。
「…ハァ?止(と)めんぞ、クイック」
「あぁ!?武器は反則だろしかも特殊武器とか!」
…わかってない奴。このままぶちキレるのも馬鹿馬鹿しくなって、ため息が出る。
「今日くらい空気読めってんだよ。…もう行くからな」
俺は後ろ向きのままクイックに手をひらひらと振って廊下に出た。



「よ、来たな」
「うん。お邪魔するねー」
の髪は半乾きだった。シャワーを浴びてから来るとは、やるな。
イスに腰掛けると、話題はさっきのプレゼントの話になった。
「…にしてもガラスペンなんて、よく見つけたね」
「この前テレビでやってたろ。これぞ匠の職人技…だっけ」
「そうそう!あれ見てすごいなーって思ってたんだよね!…あれ?」
随分と気に入った様子だったので、街の文具店で聞いてみたらすぐ入荷できると言うのでこれにした。
「あのときにフラッシュ、一緒にリビングにいたっけ…?」
「い、いや…まあな」
正確にはテレビで感激していた姿を見つけて、後ろからそれを見ていた。が夢中で声を掛けづらかっただけで、別にコソコソしていたり、ストーキング紛いであったわけではない。…決してない。
「と、ところでお前からのこれ、開けてもいいのか?」
「もちろん!見てみてよー」
話をうまく切り替えられた。実際、こいつからのプレゼントの中身は気になっている。片手に乗っかるサイズの包みだが、何が入っているのだろう。

「は、ぐるま…。和文の小説か」
出てきたのは、文庫本サイズの本数冊だった。
「うん。フラッシュは和文も読めるって言ってたから。…この人知ってる?」
「アクタ……ああ」
すべてその人物の作品を選んだという。うーん…鬼才だが、鬱っ気がある話が多いような(あくまで俺の脳内データだ)…。
「まぁ、ありがとう。少しづつ読むぜ」
ありきたりではなく、おもしろい選択だとは思う。意外に、と言ったら怒られそうだが、なりにずいぶん考えて選んだのだろう。その気持ちを十分に感じた。
「お互いにうまいこと、文系チョイスになったね」
「だな」
二人して、クスリと笑い合う。俺もも、意図せずに通じあったことが堪らなく嬉しいのだ。

「…偶然の選択に感謝、か」
「ん、なに?」
「いーや別に?」
本当、俺の箱をまず開けてくれて嬉しい限りだ。
「なんか…ニコニコがニヤニヤになってない?」
「ンなことはねーぜ?」
そうだ。俺はもっとお前と楽しみたいだけなんだから。
「俺が貰ったプレゼントはこれだけじゃねェからな、気分いいんだよ」
が「はい??」と疑問符を浮かべているのが見るからにわかる。ああ面白い。
「わかんねぇかなァ…」
テーブル越しに向かい合うに顔を近づける。至近距離で目を白黒させているさまもまた可笑しい。
「お前も含まれてんだよ、プレゼントにな…」
いつもより低い声で耳から打ち抜いてやった。びりり、と芯が震えたはずだ。

予測の違いを疑うこともせず、俺は少し乱暴にの唇を貪った。
柔らかい唇に何度もかぶり付いたかと思えば、今度は歯が当たるくらいに中を舌でまさぐる。を両頬から押さえ、気の済むまで執拗に攻め立ててから離してみると、手が涙で少し濡れていた。
「は、…イイ顔してる」
俺までつられて、少し息が上がっていた。だが、最高の気分だ。
「ふっ、フラッシュ…ひど…」
「でも悪い気分じゃねェ、だろ?」
「…う」
図星だ。真っ赤な顔して…可愛い奴。
「俺ンとこ座れよ」
「ええー」
「えーとか言うなって。冬だし、あったかいほうがいーぜ?」
「だ…だまされないからっ」
「騙すってなんだよ。っはは…」
警戒心を出されても、愛らしさが引き立つスパイス程度にしかならない。というか…やばい、ツボに入った。


「やっぱり、フラッシュはひどい!」
ベッドサイドに座って足をばたつかせているを見ると、また笑ってしまいそうになる。
ちょっとばかり怒らせてしまったが、まあそういうのもアリだろうと思う。ここから転がしていくのも愉しい。
横に腰掛けてご機嫌を窺(うかが)ってみる。
「悪いな。ひどい奴で」
「う、うん…」
俺が素直に謝ると逆に驚くんだよな。そこのところをうまく利用するわけだ。
「もっとひどい奴になるけど、許せ。」
「へ?」
の視界は一瞬天井を映したのち、俺だけしか見えなくなる。
「悪い。…これでも最高に愛してんだぜ、?」
これから他に気を回す余裕なんて、与えるつもりはなかった。

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フラッシュステージを見てたら、ガラスペンがイメージされました。
もしご存じなかったら是非イメージ検索してみてください。かなり使える工芸品です。
あとインテリヤクザも何ぞ、と思ったらググってもよろしいかと。プロ野球ネタですが。
しかしクリスマスに芥川氏の歯車とか渡しちゃう女子ってどうなんですかね。いくら外国設定とはいえ(笑。

◆全員分を読んじゃった貴女に――
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