「おぉ、12オンスのタンブラー!ビビッドカラーで元気でそう!」
開けた!、おれのを開けたよー!
「やった!それっ、おれからだからね!!」
うわ、嬉しすぎる!ずっとずっと祈ってたのが通じたのかな?それともやっぱりおれとは、運命の…っ!
「クラッシュかぁ!ありがと…わぁっ」
嬉しくって仕方なくて、おれはをギュ〜っと抱きしめた。ふわふわのが、持っていたタンブラーを落としそうなくらい驚いたのがわかったけど、この気持ちを伝えたいほうが大事だ。
「こらこらそこ!まだ早いぞ」
「続きは自室でやってね、クラッシュ」
エアーとウッドに注意されて、おれは渋々から離れた。ベリッって音がしそうだ。うー残念。
「ちぇー」
「ちぇ、じゃねーよアホ。TPOってモンがあるだろ」
フラッシュまでそんなこと言う。おれはどこだっていいと思うけどなぁ。みんなケチい!
「博士、他のも開けていい?」
「勿論構わん。全部お前のものじゃ」
「やった!」
そんなふうにおれたちが話している横で、は他の箱を開け出していた。開けるたびに、それを送ったひとにありがとーって言って、楽しそうに笑った。おれはそんなやさしいが、大好きだ。
「。あとの片付けは皆でしておくから、クラッシュの部屋に行ってやりなさい」
「え、いいの?」
会話もひと段落したところで、博士がに声をかけた。
「ああ。そのまま泊まればよいじゃろう。準備して行きなさい」
「うん。ありがとうね、博士。みんなもプレゼントありがとう!」
は散らかしっぱなしのリビングを気にしていたが、やがてもろもろのプレゼントを持って部屋を出た。
「じゃあおれも行こうかなー、いいよね博士?」
「うむ、そうじゃな。勝者特権で片付けは免除じゃ」
「わーい!」
「…そもそもクラッシュがいても片付けの戦力にはならねーぞ」
「うわひどっ。クイックだって人のこと言えないでしょ!」
クイックがぼそりと言ったのがセンサに引っかかったから、言い返してやる。いつも通り雑に手伝って、メタルやエアーに怒られればいいんだっ。
「みんなー、あとはよろしくね。おやすみ!」
「クラッシュ、おやすみー」
ハンドアームで手を振って、おれは自分の部屋へ向かった。
「クラッシュ〜」
「!待ってたよ!」
ドアが開いて、いの一番に抱きついた。こうやってするとの香りがふわっとでて、おれをもっと幸せにしてくれる。せっけんの香りもした。お風呂あがりかぁ。
「うー、前…見えない…」
「じゃ、おれだけ見てて!」
なんか今のちょっとカッコよかったよね。今度いい時があったらまた言おう。
「ドア開きっぱなしで、背中が寒いよ」
「あっ、それはごめん」
カゼ引かせちゃったら大変だ。さみしいけどと離れ、中に入ってもらった。
「楽しかったねー」
「うん、サイコーだった!」
ソファに二人で座って、さっきまでのことを振り返る。
あんなパーティをすることなんて、年に一回だろうなあ。おれは初めて参加したけど、来年もみんな揃ってやりたい。おいしいゴハンがたくさんで、部屋じゅうキラキラしてて、ワイワイ盛り上がって。
普段は人数が多いせいもあって、全員が揃うことって意外にない。キチョーな機会って感じだ。
「あ、プレゼントありがとね」
「どーいたしまして!」
はタンブラーをおれに見せてお礼を言ってくれた。
「いろんな色が入ってていいねぇ」
「そうそう!カラフルでポップな感じがいいなーって思ったんだー」
…そうだ、それに今お茶入れたらいいんじゃないかな。
「ね。、お茶淹れる?せっかくだからそれ使ってさ」
「わ、いいね!さっそく使っちゃおうかな」
ナイスアイデアだーおれ!そしたら早くお湯を沸かさなくちゃ。
「オッケー!なに淹れる?レモンティーでいい?」
「うん!あったかいのがいいな」
「らじゃ!」
立ち上がって、おれはコンロに火をかけた。
あったかいのを飲むと、カラダの中にそれがじんわり伝わっていくのがわかる。おれはキカイだけど、こういう感じってけっこう好きだ。
「そうだクラッシュ、わたしからのプレゼントは開けてみた?」
「あっ、まだだった!今開けてみていい?」
「もちろん!」
うわ、あんなに貰った時には嬉しかったのに、がいたことで舞い上がってプレゼントなんて吹っ飛んでたや…。これってやっぱり、モノより本人ってことだよね。
「あーこれ!おれが見たいって言ってた…!」
出てきたのはアクション映画の映像ディスクだった。公開予告から気になっていたけどその時は忙しくて、(まず街に出ることも少ないし、)おれは心残りにしていたのだ。
「この前ディスクになったんだって。まだ見てないよね?」
「見てない見てない!ていうかからのだったら何回でも見るよー」
よく覚えてくれてたなぁ。やば、ほんと嬉しいや。しばらくのうちは毎日見ちゃうかも。
「わー超うれしい!ありがとう!」
「わっ。よ、喜んでもらえてよかったよ」
もう一回抱きついちゃう。…ワンパターン?そんなことないでしょ。おれはずっとくっついてたいんだからね!
「クラッシュぅ?」
「んーなあに?」
「なんかずいぶん長くこのままな気がするんだけど…」
「いいじゃんよー」
肩のところに顔を乗っけて、ずっとの体温を感じていた。メットは部屋に戻った時に外しておいたから、あったかさをアタマの人工皮膚から直接感じられる。それだけでおれはけっこう満足しちゃうのだけど、にとってはお茶を飲むくらいしかできないから手持無沙汰だったかもしれない。
「ひま?」
「暇っていうか、うーん…」
「じゃーキスしよ」
顔を起こして笑顔でそう言ったら、すぐ近くのの目がまんまるになっておもしろかった。やっぱり、ちゅーはにとってもトクベツなのかな?
「え」
「キスして?」
「ええっ」
あ、困ってる。かわいーなあ!
おれ、ならなんでも好きだ。だからっていじめたりはしないけど、どんなでも好きになれる自信がある。
「してくれないなら、おれから〜」
返事は聞かずに、ちゅ。ちょっと音させて、鼻の頭にキス。
反応が見たくておれが少し顔を引くと、ぽっぽとほっぺたが赤くなってきたのがわかった。
「不意打ち…」
「ふいうちじゃないよ。…と思うよ?」
どっちだっていいんじゃない?そんなことさぁ。宣言したっておんなじだしさ。
「わかった。じゃーおれ、キスしまーす」
そっとの頭の後ろに手をやって、今度は唇にちゅう。ちょっとホンキになって、何度も触れて、舌出して。
ずっとソファの隣から抱きついてたけど、やりずらいからの間に入って、ソファに膝立ちになった。おれはあんまり背がないから、こうなっちゃう。でも、ぴったりくっつけるのはイイ。ちびっこの特権かもね。
「…っはぁ、クラッシュぅ…言えばいいってものでも…」
ほらやっぱり文句言うー。おれからするとあんまり変わらないんだけど、オンナノコは違うのかな。わかんないや。
「…悪かった?」
…キゲン、悪くはないよね?あんまりやりすぎちゃうとかわいそうだもんね。
「……」
「ね、今の、よくなかったの?」
あれ、喋ってくれない。どうしよ、すごい心配になってきたよ。今のおれ、たぶんしょんぼり顔してる。
「…よ、よかった」
え?と聞き返す。小さすぎてセンサがうまく拾ってくれなかった。
「よかったよ、うん。だいじょぶ、クラッシュ」
「…ほんと?」
「うん」
やわらかい笑顔をしてが頭を撫でてくれた。それに最後にぎゅってしてくれて、今はおれが不意打ちされたカンジになった。もちろん、幸せな方向の不意打ち!
ココロの中がわあってあったかくなる。あっ…この気持ちを伝えなきゃ!!
「好きだよ」
こんな言葉じゃ足りない。
「わたしも好きだよ」
「大好きだ」
「うん、わたしも」
これでも足りない。もう一回抱きしめたけど、それでも全然だ。
「」
ほっぺに手を添えて、じっと瞳を見た。どうしてこんなにキレイなんだろう。吸い込まれるようだった。
「おれだけ見てて」
「…ん」
深く長くキスをすると、ふわふわのが、フワフワのソファに落ちていった。
そんな姿を上で見るおれも、このまま落っこちるんだ、なんて頭のはじっこで思っていた。
☆★☆