只今お仕事中! 〜クラッシュ&ヒート〜

Apparently, CLASH and HEAT are working now.


ボクとクラッシュの二人でのお仕事は久しぶりだった。
組み合わせ的にパワーファイターのコンビってのはなかなか出来ないハズなんだけど、現場に来てみたら納得できた。…うん、立派な建物だ。
「クラッシュ、博士から伝言なんだけど」
「なに?」
まるで休日のお出かけのようにのんびりついて来たクラッシュに、ボクはステキな気分になる言葉をかけてあげた。
「ここは“ぜんぶ壊してイイ”ってさ」
「…マジで?久々!」
クラッシュの目が一気にキラキラ輝いた。これで、彼は“反転”する。
さてと。ボクもお仕事モードに突入だ。


「相変わらずえげつないねー」
「…お前こそ、メチャクチャじゃん」
スイッチの入ったクラッシュは、はたから見ても清々しい壊しっぷりだった。こーいうコトに関するセンスはピカイチで、どこを爆破すればキレイに崩れるかとか、どれだけ周りをまき込めるかとか、本能的にやってるハズなのにちゃんと上手くいく。
ボクはそこんトコロは凡人だから、フツーに計算して燃やしたりぶつかってくワケだけど。まあ火力は上から数えたほうが早いから、それなりにハデにやれる。…ボクも、けっこう愉しんでいる。
「いやホント最高だよ、クラッシュ」
ボクはこっちのクラッシュのほうが断然イイと思う。なんていうか、イキイキ感が違う。
だけどいっつもこうだと、実家が潰れちゃうかな?いや、がいるからクラッシュでも壊さないかもしれない。たぶん…壊せないだろう。

「ヒート…クラッシュボム、食っとく?」
そんな最中に、クラッシュが自分の得物をボクに差し出した。
「え、一個くれるの?今日はずいぶん機嫌イイんだね」
ボクからおねだりしてもらう時はたまにあるけれど、クラッシュからくれるなんてホントに珍しい。
「オレ様だけでぶっ壊すのも愉しいけど、せっかくだしな。ヒートが混ざってもイイと思っただけ」
不思議そうにするボクにクラッシュは、瞳孔が開いたまんまの目でぶっきらぼうに言い放った。…イイ顔してる。が見たら、あまりのギャップで卒倒しちゃうかもしれない。
こんなクラッシュがいるコトを彼女はまだ知らないなんて、彼もシュミが悪いコトだ。…自覚がないから仕方ないんだけどさ。
「ふーん。まぁ、ありがたくもらっとく」
“それ”はコーンに入ったアイスクリームみたいなカタチだけど、あんな冷っこいのじゃない。ボクが食べると…すっごいコトになるんだ。

どーん、とお腹の中で爆発音が唸る。ああクラッシュボム、ごちそーさま。
瞬間から、ものすごいエネルギーがカラダじゅうを巡って満たしていった。
「あーサイコー…クラックラきてる」
この感覚は、クセになる。熱気が勝手に漏れ出ていた。それプラス、ロボット用の酒のキッツイのを生(き)のまま一気にあおった時、みたいな酩酊感がアタマの中ではしゃぐ。いわゆる“ハイ”だ。
そこからは、思うままに炎を操って、燃やして、ぶつかって、崩れて。もう気持ちがよくてしかたがない。ボクは自然と笑い声が出ていた。
「お前、パネェな火力。そうだよ、全部ケシズミにしちゃえよ」
「アハハ、言われなくてもするっつーのぉ!」
けしかけられなくっても、もうやってるコトだ。
そう言うクラッシュのほうも容赦がない。出口という出口を爆破し終わった彼はようやく全体を潰しにかかっていた。…中に何があるかなんて、ボクは知らない。
「おいヒート。そこ溶かすと、一気に崩れるぜ」
「おっけ、いただきぃ〜」
最後の柱をボクに取っておいてくれるなんて、今日のクラッシュはホントにご機嫌みたいだ。お言葉に甘えてボクがトリを果たすと…彼の言ったとおりに、大きな音とともに土煙が湧き上がった。


仕事を終えたボクたちの前に広がるのは、ガレキの山とくすぶる煙。やった自分でも思っちゃうくらいに、ヒドい有り様だった。
「…ボクたち二人を組ました時点で、こーなるカンジはしてたけど」
「はースッキリしたー。」
うん、キレイな焼け野原。と、ケロッとした顔でクラッシュが言い放つ。“元に戻っている”はずなのに、自分のやったことに違和感を感じないのは彼のすごいトコだ。
「単純なミッションで楽しかったね」
仕事の感想としては、そんなものだった。
「なんか回収したりもしないでいいんだよね?」
「うん。どーせ中のヤツらは再起不能だろうし、任務完了〜」
うーん、と伸びをひとつして、ボクはおうちに帰ろうとした――のに。
「よぉし、スシでも食いいっかー!」
たくさん動いてお腹すいたから食べて帰ろう、というクラッシュにボクはあきれた。

「ばーか。今夜はが食事当番だよ?早く帰らないと」
そうやってすぐ忘れちゃうから、ハゲ疑惑のにーちゃんに“アホ”って言われるんだ。いちおうクラッシュのほうが兄なんだから、しっかりしてほしい。
「あ、そうだった!メニューはなんだろ?」
「ボク、リクエストしといたんだー」
そう、今日はボクの好きなモノを頼んでおいた。大好きなの手料理だ、早く帰って冷めないうちに食べたい。
「え〜なになに?教えてよ」
「どーしよっかな〜」
先に駆けだしたボクの手をつかんで、クラッシュが追いついてきた。
並走しながらボクは思わせぶりな顔で彼を焦らす。元に戻っているクラッシュは、くるくる表情が変わるからおもしろい。
このままクイズを続けて、彼の百面相を楽しみながらおうちに帰るのもイイな、なんてボクは思っていた。




(ボクたちの裏の顔も、いつかは教えてあげるよ。)


(こーいうお仕事なら、おれ大歓迎だよ!)

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彼らには、存分にヤンチャこいてて欲しいですね。覚醒!暴走!イケイケドンドン!…みたいな(笑。
クラッシュボム食えるヒートはすごいと思います。ゲーム内でも、パワーアップできるのって彼だけだもんね。
ウチのクラッシュさんは無自覚二重人格。…明るければその分、影の色だって濃いのです。

任務完了→スシでも食いいっか、の流れは某アニメからの引用です。ご存知かしら。